マンハッタン計画から現代までにどのくらいの金額が核兵器の開発保有の為に使われたのだろうか?
「アメリカの核兵器のコスト」という2008年の記事を見てみよう。
www.nti.org
1940年から1996年までで、アメリカは少なくとも5.5兆ドルを使ったと言われている。
(この金額には長年蓄積されて来た廃棄物の保管料や、将来かかるであろう有害物質の除去費用や不要施設解体費用は含まれない。)
この費用のうち
・実際の爆弾や弾頭の開発、テスト、製造に費やされたのはわずか 7% (4,090 億ドル) 。
である。残りの93%は核弾頭以外の付属費用に使われている。
・航空機、ミサイル、潜水艦、その他のさまざまな運搬システムにこれらの兵器を配備して使用可能にするために、総額の 56% (3.2 兆ドル)
・8,310 億ドル (14%) が核兵器専用の指揮統制、通信、諜報システム
・ミサイル防衛、対潜水艦戦、民間防衛など、核攻撃に対するさまざまな防御手段に 9,370 億ドル (16%)
これらはアメリカの全予算の11%にあたる。その金があればアメリカ中の子供達の教育環境を上げる事や、医療システムを改善する事や社会福祉にどれだけ役に立つだろう。
そして巨額の資金を使ってアメリカが得たものは1945から1990年時点で
”65種類に異なる構成の7万個以上の核爆弾と弾頭”
である。7万個?そんなに作ってどうする?
注目して頂きたい点は
核兵器そのものの製造費用よりも、戦闘機などの運搬システムや通信システムなどに金がかかっているという事。
軍事施設を作ったり、そのシステム運用の構築をしたりする企業、またそれらの関連企業が巨額の利益を得ているという事です。
つまりマンハッタン計画においても原爆開発をした科学者たちばかりに目が行ってしまうが、実際に大きな役割を果たしたのは、原爆に群がって労働者の街を作ったり、運用の管理をしたデュポンなどの企業だという事である。
sgets41285.hatenablog.com
核弾頭の数は1986年をピークに減ってきているのは確かだ。数は減っている。
ourworldindata.org
しかし核弾頭の数が減ってきているからと言って喜んではいられない。アメリカにおける核兵器関連の支出は2023年、過去最高をたたき出しているのだ。
www.theguardian.com
前年よりアメリカでは前年比13%、金額にして107億ドル、総額では914億ドル増加に達した。
しかも世界の核保有国9か国全てが支出を増やしているという。この5年間では34%の増加。数だけが減ってもそれは見せかけにすぎない。
アメリカ議会の予算にもはっきりと核関連出費増加の内容が書いてある。ギョッとするような内容だ。
数十年にわたり米国は新しい核兵器や核兵器運搬システムを開発して配備せず、代わりに既存の核兵器や核兵器運搬システムの寿命を維持または延長することを選択した。しかし、米国の現在の核戦力は耐用年数の終わりに近づいており、一部の運搬システムは耐用年数をこれ以上延長できない可能性がある。
www.cbo.gov
「耐用年数」が来ているから作り直すというのだ。これだとどれだけ核兵器を削減しようとしても、減らした分だけ又作り直すという事になる。新規に作る費用と古い分を廃棄する費用。核兵器費用は増加する一方で、減少する事はないという事か。
さて時代は移り、現代のアメリカで核兵器から利益を得ている企業はどこだろうか?2019年の資料を見てみょう。
サイトはオランダ最大の平和団体 PAX
paxforpeace.nl
・ハンティントン・インガルス・インダストリーズ
・ロッキード・マーティン
・ハネウェル・インターナショナル
・ジェネラル・ダイナミクス
・ジェイコブス・エンジニアリング
等の企業がアメリカ政府による核兵器の製造に関与し、中でもハンティントン・インガルス社とロッキード・マーティンは群を抜いて巨額の契約をしているようだ。
こちらの資料には28社が挙げられています。
👇
https://www.dontbankonthebomb.com/wp-content/uploads/2019/05/2019_Producers-Report-FINAL.pdf
いくつか拾ってみましょう。
まずAECOM。インフラを作る会社。アメリカの核兵器研究所の主要な請負企業。
aecom.com
Airbus
核ミサイルの開発とメンテナンス。フランスの核ミサイルの主要部品を制作。
www.airbus.com
ICBM 大陸間弾道ミサイルを作っているのがボーイング社。
www.boeing.com
他にも聞いたような名前の企業(軍事以外にも企業活動している)が多く参加ている。もちろんどの企業もHPに
「核兵器作りに参加してます」なんて言う事は書いてない。立派な企業のような顔をしつつ、核兵器をシレっと作っているわけだ。
次にそれらの企業が銀行から受けた融資額を「Don't Bank On The Bomb 爆弾に融資するのは止めて」という団体のサイトから見てみよう。
www.dontbankonthebomb.com
そしてそれらの企業にどの銀行が融資しているのか、である。
ご存じの通り、銀行は融資に対して厳格に目的を審査する。だから銀行は知っていて核兵器に投資している事になる。
peaceboat.org
ブラックロックやバンガードと言った有名な投資運用企業の名前が出ている。
そのブラックロックのCEOと仲睦まじく会食したのが岸田首相である。
www.nikkei.com
さらに言えば、駐日アメリカ大使のエマニュエル氏とブラックロックなどの投資企業が実に親密な間柄である。
核兵器に群がる企業だけでなく、それに投資する銀行にとっても数十億ドル規模の市場になっているのだ。
responsiblestatecraft.org
核兵器という「産業構造」が巨額の金の生る木になってしまっている。